1.国の施策・松戸市の条例制定
国は2014年に最低基準と位置付けた「放課後児童健全育成事業の設備及び運営に関する基準」を策定し、各自治体に条例の制定を義務付けました。松戸市はこれを受けて、同年7月に松戸市条例21号「松戸市放課後児童健全育成事業の設備及び運営に関する基準を定める条例」を施行し、4年生以上が初めて正式な利用対象になりました。
また、国は2015年3月に保育の質の確保のため「放課後児童クラブ運営指針」を策定し各自治体に通知、同年から「放課後児童支援員」認定資格研修を開始しました。
国が2007年に「望ましい方向」を示した「放課後児童クラブガイドライン」は、「最低基準」とした「設備及び運営に関する基準」に大きく発展し、同時に「運営指針」「認定資格研修」の策定によって、運営面と保育の質という両輪がそろいました。この基準と指針は松戸市と保育の会が守るべきことと、目指す保育を示しています。
2.法人組織の改革
2017年、松戸市から法人運営に関する指導および回答が求められました。これ機に、法人運営全般を振り返り、項目ごとに課題整理と対策をまとめ「事業改善計画(案)」を市に提出しました。「計画」をまとめる中で、法人の意思決定が理事会に集中し過ぎているため問題解決に時間がかかっているという組織形態上の問題が明らかになりました。その対策として本部の体制強化したほか、各学童保育所に主任指導員を配置して「主任会議」を設置し、2018年から理事会の権限の一部を「本部」と「主任会議」に移行しました。
これによって日常的な意思決定は本部と主任会議が行い、法人運営に関する大きな意思決定は理事会が行う、という棲み分けができ、それぞれの責任の範囲が明確化することで課題解決を速やかにできるようになりました。
3.補助事業から委託事業に移行
松戸市は2017年から、補助事業から委託事業に移行する制度変更の準備を始めました。2018年6月に保護者を対象にした委託事業化の説明会を行い、同年8月に委託事業者の公募を始め、同年10月~12月に委託事業者選考のための応募事業者によるプロポーザルを実施しました。
保育の会は運営している12か所のすべてに応募し、再公募も含めて13回のプロポーザルを行いました。その結果、8か所を受託したものの、残念ながら4か所で落選し、2019年から8か所の運営となりました。
また委託事業化に伴い、市内の各学童保育所の名称が「小学校名+放課後児童クラブ」、指導員は「支援員」に統一されました(以下、クラブ、支援員と記載)。
保育の会が徴収していた保育料は市が徴収することになり、法人の運営はほぼすべて委託金によって行うことになりました。ところが、委託事業初年度の2019年の委託金は極度に少なかったため、職員の一時金や各種手当などの削減を余儀なくされました。その後、何度も市と話し合いを重ね、翌年は通常に運営できる委託金額となり、職員の処遇も改善することができました。
2022年には松戸市による第三者評価が行われました。運営面や保育面、保護者や学校・地域との関係など幅広い設問でしたが、改めて事業運営を振り返る機会となりました。良いところは引き続き発展させ、改善すべき点は真摯に受け止め、子どもたちにとっての最善の利益を求めていきたいと思います。
4.新型コロナウィルスの猛威と緊急事態宣言
新型コロナウィルスの猛威による国の緊急事態宣言を受けて、2020年3月3日から市内全小学校が休校になりました。
クラブは休校に伴い、夏休みなどの長期休暇の時と同じように朝から受け入れをはじめ、一部の期間を除いて同年6月14日まで、緊急開設を実施しました。休校やテレワークが推奨される中、クラブは逆に緊急開設が求められました。このことから社会のセーフティーネットの役割を担う事業であることが明らかになり、責任の重大さを再認識することになりました。
新型コロナウィルスは子どもたちに大きな影響を与えるものとなりました。保護者との行事、日々のあそび、昼食やおやつのときの楽しい会話など、子ども時代にしか経験できないこと、成長発達していくために必要なことを制限せざるを得ませんでした。
その中で、各クラブが今までの保育内容を見直し「子どもたちのために何ができるのか」、「できる範囲でできることをしよう!」と子どもたちが楽しめる行事、あそびの目標づくりなど模索し、子ども目線に立った保育内容を改めて考える機会にもなりました。
全クラブが集まる「おひさまフェスタ」も中止にせざるを得ませんでした。
同時に感染防止のためのあそびの制限の影響もあり、日々の子どもたちのあそび自体が、こじんまりしたものになっていました。そこで「やってみよう!チャレンジしよう!」を職員部会の合言葉にし、おひさまフェスタに代わる各クラブでの「おひさまチャレンジカップ」を開催しました。
5.児童数の大幅な増加と適正規模化
法人発足時は児童数が80名を超えると多人数保育が問題になりました。しかし、現在は100名を超えるのが当たり前になり、クラブによっては150名や180名を超えてしまうという大きな問題になっています。
児童数が増えてきた背景には、長引くデフレによる賃金の抑制、物価や光熱水費の上昇などの経済的な理由、女性の社会進出が進んだことなどがあると考えられます。保護者が働くことによる保育の受け皿となるクラブの必要性が高まっていると言えます。
松戸市の待機児童を出さないという方針自体は、法人の理念である「希望するすべての子どもが学童保育所に入所」と一致しています。児童数の増加に合わせて、学校の余剰教室等を一時借用するなどの対応を進めていますが、コロナ対応としても密が避けられない過密さ、子どもが生活する場としては不十分すぎる広さだというのが現状です。子どもたちも落ち着いた生活ができず、支援員も疲弊するなど問題が山積みとなっています。
児童の心身の安定のために「設備及び運営に関する基準」にある、「専有の施設でおおむね40名」という適正規模化が早急に必要です。
6.放課後KIDSルームの開設
松戸市の計画で、市内全小学校に放課後KIDSルーム(以下、KIDSルーム)が設置されることになっていました。
2020年に、保育の会がクラブを運営している小学校のうち3校にも設置されることになり、KIDSルームとクラブを運営するのは同じ事業者が望ましいという市の方針によって、KIDSルーム事業を受託することになりました。
また2020年から、クラブとの事業上の性格を整理するために、KIDSルームは学習の場を提供する事業、クラブは保護者の就労と子どもたちの生活を保障する事業と棲み分けが行われました。
2020年10月に高木小学校と八ヶ崎小学校、2021年2月に北部小学校でKIDSルームを開設し、「クラブ事業」と「KIDSルーム事業」の2つの事業を開始しました。
7.20周年を迎えて
2023年に運営をはじめて20年目を迎えました。この20年間のあゆみは平坦ではありませんでしたが、ここまで来られたのはひとえに関係者の皆様のご理解とご協力の賜物であり、この場をお借りして感謝申し上げます。
松戸市に学童保育が誕生して50年を超える長い歴史の中で、保護者・指導員等の諸先輩方が「自分の子もほかの子もみんなで育てよう」という共同の子育ての理念を築いてきました。松戸市学童保育の会は、2003年の松戸市の学童保育の制度変更時に、その理念を継承し発展させる目的で設立され現在まで運営してきました。
ここからさらに30周年に向けて新たに歩み始めます。
原点となる「子ども目線に立った保育」、「子ども自身が心のよりどころにできる場」、「子育てを支え合える保護者同士の結びつき」を大切にし、日々より良い保育を目指し続けたいと思います。
そして保育を支える支援員が安心して働き続けることが、子どもたちの安心につながります。そのための処遇改善や適正規模化をはじめとした、職場環境の改善に努めていきたいと思います。
保護者にとっては、子育ての毎日毎日は大変で長く感じると思いますが、小学校を卒業したときに6年間を振り返るとあっという間だと感じることもあると思います。
また、子どもたちにとっての小学生の6年間は成長変化が人生の中でも最も大きく、とても大切な時期です。
子どもたちが「子ども時代を幸せに生活」し、保護者は「子ども時代の子育てを楽しむ」という理想を掲げ、現在の多々ある課題と目標と現実のギャップを埋めていく運営を心がけていきたいと思います。
今後ともご理解ご協力のほどよろしくお願いいたします。